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ピルって避妊に関係あるのはわかるけどあまりよく知らない、という読者の方が多いのではないでしょうか。
ピルとは経口避妊薬のことです。
この記事では、ピルについて、以下の点を中心にご紹介します。
- ピルの効果
- ピルの種類
- ピルの飲み方
- ピルの副作用
- ピルだけでは性感染症を防げない
ピルについて理解するためにも、ご参考頂けますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ピルとは?
ピルとは、経口避妊薬として開発された薬です。
ピルの中身は、女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)です。
ピルには、避妊だけでなく、月経困難症や月経不順の改善など、月経に伴う女性特有の症状を緩和する効果が期待できます。
また、ピルにはいくつか種類があり、用途に合わせて使い分ける必要があります。
ピルの成分中に含まれる卵胞ホルモン(エストロゲン)の量によって、
高用量ピル、中用量ピル、低用量ピル、超低用量ピルに分けられます。
尚、ミニピル、アフターピルに関しては、卵胞ホルモン(エストロゲン)を含まず、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみが含まれるという点で他のピルとは違います。
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ピルの期待できる主な効果
ピルの期待できる効果として、主に以下の5つが挙げられます。
- 避妊効果
- PMS(月経前症候群)の改善
- ニキビなど肌荒れの改善
- 月経不順の改善
- 卵巣がん子宮体がんのリスク軽減
それぞれの効果を具体的にご紹介します。
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
ピルの効果はいつから?
ピルの避妊効果は、ピルの服用を始めた時期により異なります。
ピルを月経初日から飲み始めた場合は、服用直後から避妊効果が期待できます。
月経初日以外の日から服用を始めた場合、避妊効果は「連続して7日間以上服用」してから得られます。
7日間服用するまでは別の避妊法と併用する必要があります。
その他の効果に関しては、ピルを服用後すぐに実感できるものから、数ヶ月してから感じられるものまでさまざまです。
月経困難症やPMS(月経前症候群)は、ピルを服用し始めてから起こる最初の月経から軽減します。
月経不順やニキビ、肌荒れの改善の時期は、人により異なります。
ピルの服用開始直後は、ホルモンバランスの変化に体が慣れるのに時間がかかる方がいます。
ピルを服用し始めて2,3ヶ月経過したら、ホルモンバランスや月経周期が安定してきます。
月経不順やニキビもその頃から改善を実感できることが多いようです。
避妊効果
ピルは正しく服用すれば、99.7%の高い避妊効果があります。
また、女性の意思で避妊できるという点も重要です。
ピルの避妊効果は、主に3つの作用から成り立ちます。
- 排卵を制止する
- 受精卵が子宮に着床するのを防止する
- 子宮口で精子の侵入を防止する
このように何段階にもわたる作用のおかげで、飲み忘れがなければ、高い避妊効果が得られます。
出典:佐藤力.改訂版 女性のためのピルの本:幻冬舎メディアコンサルティング.2019,p22-23
PMS(月経前症候群)の改善
ピルには、PMS(月経前症候群)を改善したり、軽減したりする効果があります。
PMS(月経前症候群)とは、月経前に起こり、月経時に消失していくさまざまな心身の不調を指します。
以下にPMS(月経前症候群)の症状の例をお示しします。
体に現れる症状
下腹部や乳房の痛みや張り | めまい | 胃腸症状 |
腰痛 | 手足の冷え | 疲れやすい |
頭痛や肩こり | ニキビや肌荒れ | 眠くなる |
精神的症状
イライラ | 無気力 | 集中力低下 |
怒りっぽい | 憂うつ | 感情の起伏が激しくなる |
攻撃的になる | 弱気になる | 涙もろくなる |
PMSの不快症状は、排卵後から分泌が増える黄体ホルモン(プロゲステロン)により起こると考えられています。
ピルを服用することで、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が抑制され、PMSの症状が和らぐ効果が期待できます。
ニキビなど肌荒れの改善
ピルを服用すると、ニキビや肌荒れが改善します。
ニキビ発生のもととなる皮脂の増加は、黄体ホルモン(プロゲステロン)により起こります。
ピルに含まれるホルモンの働きにより、黄体ホルモン(プロゲステロン)の急激な分泌がおさえられ、ニキビができにくくなります。
また、ピルに含まれる卵胞ホルモン(エストロゲン)には、肌をみずみずしく美しく保つ効果もあります。
乾燥肌の方がピルを服用したことで肌が改善した、という報告が多くあります。
月経不順の改善
ピルを服用すると月経不順が改善し、月経周期が整いやすくなります。
月経周期とは、「月経が開始した日から、次の月経が始まる前日までの日数」のことです。
正常な月経周期は、25~38日と定義されており、これにあてはまらないものを、月経不順とよびます。
月経周期をコントロールしているのが、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)です。
2つのホルモンのバランスが乱れると、月経不順になりやすくなります。
ピルにはホルモンバランスを整える働きがあるため、月経不順に効果があります。
出典:佐藤力.改訂版 女性のためのピルの本:幻冬舎メディアコンサルティング.2019,p24-25
卵巣がん子宮体がんのリスク軽減
ピルを服用すると、卵巣がんや子宮体がんの発症率が下がります。
卵巣がんの原因の1つとして、排卵が関係しているといわれています。
女性にとって毎回の排卵は、卵巣が刺激され、負担がかかります。
昔に比べて出産回数が減少している現代では、排卵回数が増え、卵巣が酷使されています。
ピルを服用すると、排卵を抑制するため、卵巣がんにかかりにくくなると考えられます。
一方、子宮体がんの原因としては、過剰に分泌された卵胞ホルモン(エストロゲン)が関係しているといわれています。
ピルに含まれる黄体ホルモン(プロゲステロン)が、子宮内膜細胞の増殖を抑制し、がん化を防ぐと考えられています。
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
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ピルの種類について
ピルには、主に以下の6種類があります。
- 高用量ピル
- 中容量ピル
- 低用量ピル
- 超低用量ピル
- アフターピル
- ミニピル
それぞれのピルの特徴について説明します。
高用量ピル
高用量ピルとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)の含有量が、50マイクログラムより多いピルのことです(1マイクログラムは100万分の1グラム)。
世界で最初に開発されたピルは、高用量ピルでした。しかし卵胞ホルモン(エストロゲン)が副作用の原因であることが判明し、もっと少ないホルモン量で高い避妊効果を持つピルが開発されました。
現在、高用量ピルは副作用が大きいため、避妊用のピルとしては殆ど使用されません。
高用量ピルは主に、中用量ピルまでで改善しない以下の治療で用いられます。
- 不正出血
- 生理不順
- 月経困難症
- 月経過多
- 卵巣機能不全などによる不妊症
中用量ピル
中用量ピルとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)の含有量が50マイクログラムちょうどのピルのことです。
中用量ピルは、避妊用として用いられることは少なく、主に以下の治療や目的で用いられます。
- 不正出血
- 月経困難症
- 月経日の移動
- 不妊症
月経日の移動は、予定日より早めることも、遅らせることもできます。
(早める場合は、1つ前の生理頃から早めに相談する必要があります)
アフターピルとして用いられることもあります。
中用量ピルは、効果も強いですが、副作用が出やすい特徴があります。
そのため、継続的な服用ではなく一時的な治療に使われることが多いです。
低用量ピル
低用量ピルとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)の含有量が50マイクログラム未満のピルのことです。
日本で一般的に「ピル」というと、低用量ピルを指すことが多いです。
日本において避妊目的で利用されるピルでは、低用量ピルが主流です。
低用量ピルは、以下のような様々な治療や目的で用いられます。
- 避妊
- 月経困難症
- PMS(月経前症候群)
- にきび
- 生理日をずらす
また、低用量ピルは、月経困難症の治療目的であれば、保険適用のものもあります。
低用量ピルは
- 1シートあたりに含まれる有効成分の配合量
(服用期間中有効成分の含有率が一定/服用期間中有効成分の含有率が何段階かに変化する)
- 1シートあたりの錠数
(「21錠タイプ」/「28錠タイプ」)
- 含まれる黄体ホルモンの種類の違い
(第1~4世代)
などで分類できます。
低用量ピルには多くの種類があり、自身に合ったピルを選択できるメリットがあります。
各分類においてのそれぞれのピルの特徴を知り、より使いやすいピルを選べるとよいですね。
超低用量ピル
超低用量ピルとは、エストロゲンの含有量が1錠中30マイクログラム以下のピルのことです。
超低用量ピルは、ホルモン量が最小限に抑えられているため、副作用が少ないのが特徴です。日本では避妊目的としては認可されていませんが、避妊効果もあります。
通常のピルは28日周期で服用しますが、超低用量ピルの中には、最長120日間連続で服用可能なものもあります。
そのため、PMSや月経困難症、子宮内膜症など、月経の回数を減らしたい場合に有効です。
また、低用量ピルには、服用している28~120日間の中の、好きなタイミングに月経を起こせるメリットもあります。
超低用量ピルは、以下のような治療や目的で用いられます。
- 月経困難症
- 子宮内膜症
- 月経不順
- PMS(月経前症候群)
アフターピル
アフターピルとは、緊急避妊薬のことです。
避妊しないでセックスしてしまったり、避妊に失敗したりした際などに、望まない妊娠を防止する目的で服用します。
アフターピルは、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを含みます。
アフターピルは、性交後72時間以内に、できるだけ早く1錠服用します。
避妊のためには、72時間ぎりぎりまで待つのではなく、性交後早い時間に服用する方が効果が高いことがわかっています。
ただし絶対に避妊できるわけではないことに、注意が必要です。
多くの方は、アフターピルを服用してから、次の月経予定日の1週間後までに月経が始まります。
月経予定日を過ぎても月経が始まらないようであれば、妊娠の可能性もあります。
アフターピルを服用した際の主な副作用は、吐き気、頭痛、腹痛、眠気ですが、服用後しばらくすると落ち着きます。
ミニピル
ミニピルとは、卵胞ホルモン(エストロゲン)を含まず、黄体ホルモン(プロゲステロン)のみを配合したピルのことです。
ミニピルは、黄体ホルモン(エストロゲン)を含まないために、血栓症のリスクが殆どないことが特徴です。
そのため、血栓症のリスクが高く、ピルを処方してもらえなかった方でも使用できることがあります。
日本では避妊目的としては認可されていませんが、正しく服用すれば避妊効果があります。
ミニピルは、他のピルより、服用する時刻を、より正確に守ることが必要です。
ミニピルは、3時間以上服用が遅れると、避妊効果がなくなる可能性があります。
またミニピルは、含有するホルモン量が少ないため、飲み始めの数ヶ月は、多くの方に不正出血が起きやすいです。
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ピルの飲み方について
ピルの飲み方は、以下のように種類ごとに異なります。
- 高用量ピルの飲み方
- 中用量ピルの飲み方
- 低用量ピルの飲み方
- 超低用量ピルの飲み方
- アフターピルの飲み方
- ミニピルの飲み方
また、ピルを服用している最中に、以下のような状況が起こる可能性があります。
- ピルを飲み忘れたとき
- ピルを飲み間違えたとき
- ピルの服用をやめたいとき
こちらでは、ピルの種類別の一般的な飲み方や、ピルを服用していて想定される状況と対応について説明します。
ご参考頂けますと幸いです。
尚、ピルの用法・用量などはその方に合わせて指示があります。
処方されたピルは、必ず医師の指示通りに服用しましょう。
高用量ピルの飲み方
高用量ピルとして、多く用いられるのが、「ソフィアC」です。
ここでは「ソフィアC」の飲み方について解説します。
「ソフィアC」は1シート21錠で、飲み方は用途により異なります。
以下を参考にして、医師の指示通りに服用しましょう。
治療目的 | 内服方法 |
・月経量異常(過小/過多月経)
・月経周期異常(稀発/多発月経) |
1日1錠 月経周期5日(生理5日目)より約3週間連続で服用 |
・機能性子宮出血
・無月経 |
1日1~2錠を7~10日間連続投与 |
・卵巣機能不全による不妊症 | 1日1錠 生理5日目より約3週間連続投与し、次の周期に妊娠の成立を期す |
出典:あすか製薬(ソフィアC配合錠添付文書)
中用量ピルの飲み方
2022年8月現在、日本国内で処方される中用量ピルは、「プラノバール」のみとなっています。
こちらでは「プラノバール」を用いて説明します。
以下を参考にして、医師の指示通りに服用しましょう。
治療目的 | 服用方法 |
・月経周期異常
・無月経 ・月経量異常 ・機能性不妊症 |
1日1錠を月経周期第5日(生理5日目)より、約3週間連続投与する |
・機能性子宮出血 | 1日1錠を7~10日間続けて服用 |
出典:あすか製薬(プラノバール配合錠)
また、月経移動で用いる場合は以下のように服用します。
目的 | 服用方法 |
月経を遅らせる | 月経予定日の5~7日前から服用
月経が来ても良い日まで服用を続ける |
月経を早める | 1つ前の月経開始初日~5日以内、最低10日間服用
服用中止後、2~4日後に生理が開始される |
低用量ピルの飲み方
低用量ピルの飲み方を説明します。
低用量ピルは、28日間で1周期として、1日1錠、毎日決まった時間に服用します。
飲み忘れを防止するために、起床直後、就寝前など、忘れにくい時間に飲み始めるとよいでしょう。
低用量ピルは、月経初日から服用し始める「Day1スタート」が主流ですので、「Day1スタート」を服用する場合で説明します。
(その他の種類では、週末に月経が重なりたくない場合など、「Sundayスタート」があります)
基本的な服用方法(1日1錠)は、どの低用量ピルも同じです。
「21錠タイプ」と「28錠タイプ」とで、休薬期間の有無が異なります。
タイプ(錠) | 服用頻度・日数 | 休薬 | 再開 |
21錠タイプ | 1日1錠 21日間 | 7日間 | 休薬期間の後、次のシートを飲み始める |
28錠タイプ | 1日1錠 28日間 | 28錠の中に偽薬が7錠含まれるため、休薬せず飲み続ける。1シート終わったら次のシートを飲み始める |
超低用量ピルの飲み方
超低用量ピルは、服用したい周期ごとに飲み方が異なります。
飲み方については、120日間連続で服用できる、「ヤーズフレックス」を例に説明します。
超低用量ピルの基本的な服用方法(1日1錠を定刻に)は、どのピルも同じです。
28日周期になるように服用する場合と、それ以上の日数の周期になるように服用する場合で、休薬期間までに飲み続けるピルの錠数が異なります。
どちらの周期で服用しても、休薬後は、出血の有無にかかわらず次のシートを飲み始めます。
周期 | 服用頻度・日数 | 休薬 |
28日周期 | 1日1錠・24日間 | 4日間 |
最長120日周期 | 1日1錠
最低24日~最長120日間 |
服用25日以降
・3日間連続する出血⇒翌日から4日間休薬 ・3日間連続する出血なし⇒最長120日服用 翌日から4日間休薬 |
出典:バイエル薬品株式会社(ヤーズフレックス配合錠)
アフターピルの飲み方
アフターピルは、性交後72時間以内に、できるだけ早く1錠服用します。
性交後、早い時間に服用する方が避妊効果が高いです。
72時間以上経過していた場合でも、効果がすぐに消失するわけではないので、まずは医師に相談しましょう。
万が一服用後2時間以内に嘔吐した場合は、十分に薬の成分を吸収できていない可能性が高いため、すぐに1錠追加して服用します。
アフターピルを服用してから、次の月経予定日の1週間後までに月経が始まれば、避妊が成功したことになります。
月経予定日の1週間後までに月経が来ない場合は、医師に相談し妊娠検査をしましょう。
ミニピルの飲み方
ミニピルは、月経初日から服用を始めます。
ミニピルには休薬期間はなく、1日1錠決まった時刻に毎日飲み続けます。
1シートを飲み終えたら、翌日から次のシートを飲み始めます。
服用時刻が3時間以上遅れると、避妊効果がなくなる可能性があるため、飲み忘れには特に注意が必要です。
万が一3時間以上服用時間がずれた場合は、その後7日間連続して服用するまで、別の避妊方法を併用しましょう。
ピルを飲み忘れたとき
こちらでは、日本で主流である、低用量ピルを飲み忘れた場合について説明します。
飲み忘れた場合の対応は、何錠飲み忘れたかにより異なります。
2錠以上飲み忘れた場合は、避妊効果がなくなっている可能性があるため、コンドームなど別の避妊方法の併用が必要です。
以下の表をご参照下さい。
飲み忘れた錠数 | 対応 |
1錠 | ・飲み忘れた錠剤をできるだけ早く服用する
・残りの錠剤は予定通りに服用する |
2錠以上 | ・飲み忘れた錠剤のうち直近のものをできるだけ早く服用する
・残りの錠剤は予定通りに服用する ・7錠以上連続して服用するまでは、別の避妊方法を併用する |
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
ピルを飲み間違えたとき
ピルを飲んだことを忘れて、次の日の分まで間違えて服用することがあるかもしれません。
1日に2回分のピルを誤って服用すると、人によっては吐き気や頭痛などの副作用が強く出ます。
しかし基本的には心配いりません。
ピルに含まれるホルモン自体は、もともと女性の体の中にあるホルモンです。
一時的に服用する量が増加しても、症状自体は一過性で、深刻なダメージにつながることはありません。
飲み間違えた翌日から、通常通り1日1錠ずつ服用していきましょう。
出典:中村理英子.中村先生、ピルって何ですか?:1999,p28
ピルの服用をやめたいとき
ピルをやめたくなったときは、医師に相談の上、基本的にやめても大丈夫です。
月経周期を乱したくない場合は、今飲んでいるシートを飲み終えてからやめるとよいでしょう。
ピルの服用をやめたら避妊効果がなくなるため、避妊したい場合は別の避妊方法を用いましょう。
またピルは、服用開始して3ヶ月以内が血栓症のリスクが高いです。
ピルの服用を中止したり、再開したりを繰り返すのは、血栓症のリスクが高くなり危険ですので避けましょう。
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
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ピルの副作用について
ピルの副作用は、主に以下の5種類が挙げられます。
- 血栓症
- 不正出血
- 太るのか
- 吐き気
- 眠気
こちらでは、副作用がいつから始まるのかと、それぞれの副作用について説明します。
副作用はいつから?
ホルモン量が少ないピル(低用量ピルや超低用量ピルなど)の場合は、副作用が大きく軽減されています。
副作用の出方は人によって異なります。
副作用について過度に心配せず、気になる症状があれば医師に相談しましょう。
一番気になる副作用は血栓症です。
血栓症は、ピルを服用し始めて3ヶ月以内になりやすく、その後発症率は低下していきます。
その他には、ピルを服用し始めるとすぐに、吐き気、乳房の張り、頭痛、不正出血など「マイナートラブル」の症状があらわれる方がいます。
マイナートラブルは、我慢できるようであれば、2~3ヶ月以内に落ち着くことが多いです。
日常生活に支障があるほどつらい場合は、医師に相談しましょう。
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
血栓症
ピルを服用すると、血栓症になるリスクが高まります。
血栓ができやすくなる理由としては、ピルに含まれる卵胞ホルモン(エストロゲン)の血液凝固作用によるものとされています。
血栓症は、ピルを服用し始めてから3ヶ月以内になる確率が高く、徐々に低下していきます。
現在主流になっているピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)の含有量が少なく、血栓症になるリスクは大幅に軽減されています。
しかし、低用量のピルでも、内服により血栓症になるリスクは少し高まるため、元々血栓症になるリスクが高い方は、処方を受けられない場合もあります。
ピルを服用する希望があり、下記にあてはまる方は、医師に必ず伝えましょう。
- 肥満
- 喫煙者
- 35歳以上の人
- 高血圧
- 前兆を伴う偏頭痛の診断をされている方
- 肝機能障害
- 心疾患/腎疾患
また、血栓症の初期症状としては、以下があります。
服用していて以下のような症状があらわれたら、すぐに医師に相談しましょう。
激しい腹痛 | 激しい胸痛 | 激しい頭痛 |
見えにくい/視野が欠ける | 舌のもつれ | 失神・けいれん |
意識障害 | ふくらはぎの痛み・むくみ・赤み |
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
不正出血
ピルを服用することによりおこる副作用として、不正出血があります。
ピルを服用し始めた頃は、ホルモンバランスが変化し、出血しやすくなります。
不正出血の量や色はさまざまで、茶色っぽいおりもの状のこともあれば、生理のような量のこともあります。
ピルが原因の不正出血の場合は、服用を続けてもかまいません。
ピルを数ヶ月飲み続けることで、ホルモンが安定し、出血が軽減する傾向があります。
尚、ピルの飲み忘れも不正出血の原因となります。
できるだけ毎日定刻に服用することを心がけましょう。
長期間出血が続く場合は、ピル以外の要因も考えられますので、医師に相談しましょう。
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
太るのか
ピルが直接的な原因となって体重が増加することはありません。
ピルを服用して太ると言われるのは、主に以下の2つの作用に対していわれるようです。
- ピルに含まれる卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が、体に水分を溜めやすく、むくみやすくする
- 黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きで、食欲が増進する
上記2つの作用の結果、一時的に体重が増えることもあります。
しかし、食事量に気をつける等の工夫で軽減できます。
出典:佐藤力.改訂版 女性のためのピルの本:幻冬舎メディアコンサルティング.2019,p29
吐き気
ピルを服用すると吐き気が出る方がいます。
ピルを服用するとホルモン環境が変化し、体内が妊娠中と似た状態になります。
吐き気はそういったホルモン環境の変化により起こると考えられています。
吐き気は、ホルモン含有量が多いピルで出現しやすく、最近主流となっている低用量ピルや超低用量ピルでは軽減されています。
また、服用開始時に起こりやすく、2,3ヶ月で治まる傾向があります。
我慢できないほど苦痛な場合は、医師に相談しましょう。
ピルの種類を変えるなどの選択肢もあります。
眠気
ピルを服用すると、眠気が出る方がいます。
眠気は、ピルの服用によるホルモンバランスの変化で起こると考えられています。
眠気が出やすい時期は、ピルを服用し始めて1~2週間ほどと報告されています。
他のマイナートラブルと同様に、2~3ヶ月して体が慣れると治まることが多いです。
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ピルだけでは性感染症は防げない?
ピルを使用していても、コンドームの適切な使用は大切です。
なぜなら、ピルには性感染症を防止する効果はないからです。
ピルを服用すると、高い避妊効果が得られるために、コンドームを使わなくなる方が増える傾向があります。
国内の性病検診・性病外来を受診した患者の研究で、ピルの「使用者」は「非使用者」と比べて、クラミジア感染症の感染歴が高い、という結果が出ました。
この研究結果より、「ピルの使用者は、コンドームの使用率が低下しているために、クラミジア感染症に感染する確率が高まった」、と考えられます。
つまり、避妊をしながらも、HIV感染や他の性感染症を予防するためには、コンドームも併用することが重要ということです。
正しい知識をもち、ピルや他の手段を併用することで、望まない妊娠や性感染症から自分の身を守りましょう。
出典: セックスワーカーにおけるピル使用、コンドーム使 用、および性感染症歴の関連
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ピルについてのよくある質問
Q ピルを飲むと不妊にならないの?
A) ピルを服用することで、不妊症につながるという因果関係はありません。
むしろ、ピルを服用している間は排卵を抑制し、卵巣を休め、妊娠力を高める効果も指摘されています。
ピルを中止後、90%以上の人は3ヶ月以内に排卵のサイクルが自然に戻ると報告されています。
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
Q ピルは誰でも飲めますか?
A) ピルには服用するのが禁忌な方、注意が必要な方がいます。
日本のガイドラインでピルを服用してはいけない人が決まっています。
以下のような方は、ピルが処方されないことがあります。
- 妊娠・産後・授乳中
- 35歳以上で1日15本以上喫煙
- 手術前後、長期安静
- 現在や過去にかかったことのある疾患
- 初経前、50歳以上または閉経後
- 診断が確定していない異常性器出血
- 過敏性素因
禁忌の条件にあてはまっても、別の種類のピルが服用可能なこともあります。
ピルを服用したい場合は、ご自身の状態をきちんと伝え、医師に相談してみましょう。
出典:日本産婦人科学会(低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配剤ガイドライン(案))
Q ピルの値段は?高いのではないかと心配です。
A) 低用量ピルの価格相場は、1ヶ月あたり2000円~4000円程度です。
ピルの処方に際しては医師の診察が必要で、ピルの料金に加えて、診察代や処方代などがかかります。
病院や保険の適用の有無などにより、値段はさまざまです。
かかりたいクリニックが決まっていたら、問い合わせていただくとよいでしょう。
Q ピルは風邪をひいたときでも飲めますか
A) 風邪をひいていてもピルを服用するのは問題ありません。
ただし、ピルを服用しながら風邪薬を服用すると、薬の相互作用がおき、お互いの薬の作用を低下させたり、強めたりすることがあります。
ピルの服用中に他の病院で処方される際は、ピルを服用していることを伝えましょう。
また、24時間以上続く嘔吐や激しい下痢などの際には、ピルの吸収が悪くなり、妊娠の危険性が高まります。
消化器症状が強く出る体調不良の際は、他の避妊法を併用してください。
Q ピルは病院でもらわないといけませんか?
A) ピルを服用するためには、医師の処方が必要ですが、オンライン診察の場合、病院に出向かなくても大丈夫です。
病院を受診した後、必要な問診や検査を受け、処方できるかどうかを医師が判断します。
その後にピルを処方され、飲み方や注意点などの指導を受けます。
最近は、病院に出向かなくても良い、オンライン処方も充実しています。
オンラインで処方してもらった場合でも、定期的に婦人科で検診を受けましょう。
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ピルのまとめ
ここまでピルについてお伝えしてきました。
ピルの要点をまとめると、以下の通りです。
- ピルは経口避妊薬である
- ピルの効果は、避妊・PMS(月経前症候群)の改善、ニキビや肌荒れの改善、月経不順の改善、卵巣がんや子宮体がんのリスク軽減などさまざまである
- ピルにはいくつかの種類があり、用途に応じて使い分ける
- ピルの服用に際しては副作用が起こる可能性があり、医師の処方が必要である
- ピルを服用しても性感染症の予防はできないため、コンドームの使用が大切である
こちらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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